子供がいる家庭で離婚の話しになった時に真っ先に考えなくてはならないのが養育費です。
「養育費」とはよく聞く言葉ですが、相場はどのくらいなのか?どのように決めたら良いのか?塾や習い事、大学の進学費用等はどうするのか?心配な事がたくさんあります。
ではこの記事で一つずつ解決していきましょう。
もくじ
1:養育費算定表と養育費を調べる方法
養育費の相場とは?
養育費はどのように決まるのか?養育費を決めるのに必要な事はたった3つです。
①夫婦の年収②子供の年齢③子供の人数
借金や貯金やその他の費用等は全く関係ありません。
この3つの要素を裁判所から公表されている「養育費算定表」にあてはめて出た金額が養育費の「相場」なのです。
養育費算定表の見方
それでは裁判所から公表されている養育費算定表をみてみましょう。
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養育費算定表を確認するポイントは3つです。
①子供の人数と年齢から該当の算定表を開く
②算定表の縦列(義務者の年収)に養育費を支払う夫の年収、横列(権利者の年収)に養育費をもらう妻の年収から交わるところを探す。
※年収は給与所得者か自営業者かで分かれています。該当の箇所で確認しましょう。
③例えば夫の年収が給与所得で500万円、妻の年収が給与所得で100万円、14歳未満の子供が2人いる場合は6万円~8万円のゾーンの上のほうで交わりますので8万円が相場ということです。
2:養育費算定表を見る時のポイント
実際に養育費算定表を見るといっても、収入について考慮したい項目やどこを見て収入と言えばいいのか?悩んでしまいますよね。では養育費を考える時に考慮をするポイントを確認してみましょう。
「収入」とは何の金額のこと??
養育費算定表に当てはめる「収入」とは基本的に源泉徴収票に記載されている「支払金額」の金額です。つまり手取り収入ではなく総支給金額です。
自営業の「収入」は?
自営業の方の場合は確定申告で申告する収入金額の合計額です。
残業抑制または部署異動等で昨年よりも月収が減っているor増えている場合はどうするの?
明らかに前年の収入から大きく減っているor増えている場合は直近3ヵ月分の給与明細をもとに概算で計算しても良いでしょう。
離婚後に家族手当・住宅手当等の手当がもらえなくなります
家族手当や住宅手当等、離婚後にもらえなくなることが明白なお金がある場合はマイナスして計算するとよいでしょう。
妻が育休中の離婚の場合、妻の収入はいつの金額で判断すればよい?
妻が育休中の離婚の場合、育児休業手当が支給されていますので、妻の年収は育児休業手当の金額をベースに計算します。職場復帰後は再度養育費を設定するとよいでしょう。現在はコロナ渦でもあり、職場復帰に思ったよりも時間がかかったり、以前と同じ部署で復帰できるとも限りませんので慎重に養育費を設定したほうが良いですね。
ボーナスやお誕生日の増額は必要?
会社によっては、年収ベースでは金額は多いものの、ボーナスの金額が大きく毎月の手取りはそんなにもらえていない。という方もいます。そのような場合は毎月の養育費を相場より少し少ない金額に設定し、ボーナスの月に多く養育費を払うように決める方もいます。また、お子さんのお誕生日には少しだけ増額して払いたいという方もいますので夫と妻で話し合いをして決めましょう。
3:養育費に考慮すべきお金は?これも養育費に入る?
養育費算定表で養育費の相場を確認した後は、この金額からプラス・マイナスの特別に考慮されるべきお金があるかどうかを確認します。これも養育費に入るのか?気になるお金を確認しましょう。
塾や習い事の月謝
塾や習い事の月謝は基本的に養育費の中でやりくりするお金です。しかし、妻も夫も子供の意思を尊重して習い事や塾を継続してほしい(スポーツや音楽に特化した学校や私立の学校、医療系学校への進学を両親ともに望んでいる)のであれば負担割合を養育費とは別に協議しても良いと思います。
学資保険の毎月の支払
学資保険の毎月の支払も基本的に毎月の養育費の中でやりくりするお金です。学資保険の契約者が夫で離婚後は妻が親権者となる場合はそのままにせず保険会社の担当者に相談して名義を変更するか保険の種類を変更する相談をしましょう。学資保険を夫の名義のまま継続すると離婚後にトラブルになることがありますので注意が必要です。
大学や専門学校の学費や入学費
現在は公立高校が無償化され私立高校の授業料も実質無償化となりましたが、大学に進学するとなるとそれなりにまとまったお金が必要です。大学にかかるお金は「特別費用」として計算されることが多く、養育費を決める際にも大学進学の際の費用を毎月の養育費とは別に取り決めする方が多いです。お子さんが中学生・高校生の場合は具体的に本人から進学先の希望がきけますしイメージがつくと思いますが未就学児の場合は遠い未来の事なのでイメージがわかないかもしれませんが遠い未来に揉めないために離婚時にどちらがどのくらい負担をするのかという認識を夫と妻でしっかり合わせておくことが必要です。
子供が入院したり手術をした時のお金
お子さんが怪我をしたり病気になった場合の費用は毎月の養育費とは別の「特別費用」です。保険の範囲内で治療ができれば良いですが、保険外の治療をおこなったり高額な費用が発生した場合はお互いに負担します。
4:養育費はいつからいつまで支払うのか?
養育費の支払い開始は離婚届を提出した月または翌月からの開始とします。別居をしていて婚姻費用の支払いがある場合は離婚届の提出時期を基準として養育費に切り替わります。
養育費の終わりは高校を卒業するまでと定め、高校卒業後に進学した場合は学校を卒業するまで延長すると取り決めます。しかしながら大学は4年以上通うことができるので最大を4年と設定することが多いです。医歯薬系の6年生大学に進学することが明確な場合は6年を上限に設定します。夫は大学進学に反対しており、大学以降の養育費支払を拒否している場合は夫と妻の最終学歴が基準の一つになります。夫も妻も大学を卒業している場合は両親が離婚していなければ子供も大学に進学したであろうと判断されることが多いです。医歯薬系大学や音楽、スポーツの大学も両親の学歴を考慮して決定された審判例があります。逆に夫も妻も公立中学・高校出身で夫は公立中高校への進学を希望していたにもかかわらず妻がお受験をさせて私立中学校に進学させた場合は夫の主張が認めれられる可能性が高いでしょう。
子供の進学に関しては、夫と子供の面会交流が大切です。夫が子供と面会交流を続けることで子供と夫の進学に対する意思疎通ができ、夫も子供の進路を応援したいという気持ちになると支払いにも納得感がでるのではないでしょうか。
5:養育費を公正証書にするメリット
養育費を公正証書にするメリットはなんといっても「強制執行」ができることです。
強制執行とは養育費の不払いがあった場合に夫の勤め先のお給料を差押えできるということです。自営業の場合は夫の財産を自分で特定する必要があるので強制執行のハードルは少し上がります。
その他にも公正証書で取り決めをすることで離婚後に「言った・言わない」のトラブルを防止することができます。前述した塾や習い事のお金、進学費用は何も決めずに離婚をすると離婚後にトラブルのもとになります。公正証書を作成することで夫側も「記載されていない金額を請求されない」というメリットがうまれます。公正証書に記載したお金を払う。それ以外は支払わないという事が明確になるので夫・妻どちらの立場でも養育費を公正証書にすることにはメリットがあります。
6:夫・妻が再婚したら養育費はどうなるの?
基本的に夫が再婚しても養育費に変更はありません。しかし、夫と再婚相手との間に子供が産まれたり、夫が再婚相手の子供と養子縁組した場合は夫が扶養する義務のある子が増えることになり、養育費の金額が減額になる可能性があります。
妻が再婚し、妻の再婚相手が子供と養子縁組をした場合、子供の第1扶養義務者となるので養育費の請求は基本的にできなくなります。
7:養育費の支払い方法
毎月の養育費は妻または子供の口座に振り込んで支払います。子供の口座を指定する場合は一番下の子の口座にしましょう。養育費は何年も支払うことになり、毎月振込に行くのも大変です。各金融機関で毎月決められた金額を自動で振込できる定額自動送金サービスがありますので銀行に確認してみるとよいでしょう。
養育費の支払い日は夫の給料日を基準に決めます。毎月25日が給料日の場合は毎月月末を支払日に決めることが多いです。
8:夫婦の間で養育費の金額が決まらなかったら
これまで養育費を決める方法をお話してきましたが、最終的には養育費は夫と妻の間の話し合いで決定します。話し合いで折り合いがつかない場合は養育費を決める調停を家庭裁判所に申し立てることになります。しかしながら、調停になった場合はよほど特殊な事情がない限り、養育費算定表前後の金額で決まります。話し合いがうまくまとまらない場合は算定表の金額を再度見直してみましょう。