子育てが終わり、子供も無事に社会人となって、50代以上で離婚を考える方も少なくありません。
熟年離婚は、夫の定年退職まであと数年という状況もあり、退職金が離婚時の財産分与でどのくらいもらえるのか?が気になるところです。
勤めている会社によっては退職金の支給時期や支給方法も異なります。
それでは離婚時にどのように退職金を財産分与するのかについて解説をしていきます。
退職金はどのくらいもらえるの?
一般的に財産分与でもらえる退職金は、「離婚する時に退職する場合貰える金額」から婚姻期間の年数の分÷2の金額です。
しかし、会社の退職金の支払い方式等によっては、過去の裁判で異なる計算式が採用されたこともありますのでご注意ください。
・定年退職する時にもらえる退職金が1,500万円
・離婚時に退職するともらえる退職金は1,200万円
・離婚時までの勤続年数は30年
・婚姻期間は20年
1,200万円÷30年×20年÷2=400万円
退職金が貰える可能性はどのくらい?
退職金の支払いは、離婚する時から未来の予定になりますので、離婚する時点ではあくまで「受給予定」のものです。
まだ退職まで数年あると、夫はきちんと退職金が支払われるかどうかが心配なものです。
しかし、未来の予定だからと言って、離婚時に退職金が財産分与できないとなると、長年夫を支えてきた妻には不公平になってしまいます。
そこで、裁判所では退職金をもらえる可能性が高いと判断した場合に、将来の退職金も離婚時の財産分与として認めているようです。
退職金を受給できる可能性が高いと判断される場合
・勤務先の経営状況が良好であること
・夫の勤続年数が長いこと
・退職金支給時点までの期間が短いこと
(裁判所では10年以内に退職金支給の予定がある場合はそれほど長期ではないと判断される可能性があるようです)
退職金の財産分与に必要なもの
将来の退職金を計算するためには根拠となるものが必要です。
会社によっては、今退職するとした場合の退職金を計算してくれるところもあります。また、退職金の規定に計算方法がしっかりと書かれている会社もあります。
つまり、退職金の財産分与の話し合いには、夫の協力が必要不可欠ということです。
夫が「退職金は〇円くらいもらえるから、財産分与で〇円あげる」と口頭で提示してきた金額で納得できれば良いですが、根拠となる資料を持ってきてもらうには夫が会社に掛け合う必要があります。
きっちりしておきたいタイプの夫であれば積極的に根拠となる資料を集めてくれると思いますが、そもそも離婚に後ろ向きであったり、退職金の財産分与にあまり納得していない場合は非協力的な可能性もあります。
どうしても退職金の情報を開示してくれない場合は弁護士さんに相談するのが良いと思います。
年金タイプの退職金はどうする?
会社によっては退職時に退職金を一括で受け取らず、年金のように定年後から定期的に受け取ることを選ぶことができる場合もあるようです。
このような年金タイプの退職金の場合は、死亡時まで支払われると仮定すると夫が何歳まで生きるのか?という事を計算する必要があるため、離婚時にまとまったお金をいくらかもらう?という計算はかなり難しいものになります。
また、年金タイプの場合は夫が一時金としてまとまったお金を受け取っていない限り、退職時にまとまったお金が入るわけではないので、離婚時に妻に退職金の財産分与のお金を一括で支払うお金が用意できないという事もあります。
年金タイプの場合は、会社から支給された都度〇円を妻に支払うとして離婚時に約束をするという方法もあります。
既に支払い済みの退職金
離婚時に既に退職金が支給されている場合は、婚姻期間に応じて財産分与の対象となります。
しかし、場合によっては離婚までの期間に生活費として使ってしまって、ほとんど残っていないという事もあるでしょう。
もし、生活費として使ったのであれば夫婦の生活に使ったことになるので、残っている退職金が無ければ財産分与の対象はなくなってしまった事になります。
夫が自分の趣味のために使ったのであれば、妻は退職金の財産分与を主張できるでしょう。
預貯金で離婚時に清算をする
夫婦間の預貯金や資産があるようでしたら、離婚時の財産分与で妻が退職金分を含めて多くもらい、将来の退職金が支給になってもその時はもらわないというのも一つの方法でしょう。
退職金は、もらえる可能性が高くてもやはり未来の事ですのでどうなるのかわかりませんし、想像できない事が起こる可能性も否定できません。
離婚するその時に清算できればそれが一番確実でしょうし、離婚後に夫婦間で連絡をとる事がなくなりストレスも軽減されるでしょう。
未来の退職金は公正証書で約束をしましょう
退職金の財産分与が夫婦間で合意できたら離婚公正証書を作成することをおすすめいたします。
未来の退職金については退職日から〇日以内に振り込むと約束する場合や、令和〇年〇月〇日に〇円を振り込むと約束をして但し書きで退職日が変更になった場合の約束をする場合もあります。
約束の方法は退職日までどのくらいの期間があるか?退職日がずれこむ可能性がどのくらいあるのか?によってお互いに一番良い方法を選択するのが良いでしょう。
退職金の財産分与は金額が大きいので離婚公正証書でしっかりと支払いを約束した証拠を残しておきましょう。