離婚の際に夫婦で取り決めた養育費ですが、離婚後の年数が経過するとお互いの生活にも変化があり、離婚時に決めた養育費が適切ではなくなるという事も珍しくありません。
特に離婚時にお子さんが未就学児の場合は養育費の支払い期間が長くなりますので父親、母親ともに離婚後の生活に変化があっても不思議ではありません。
しかし、離婚時に取り決めた養育費の金額を後になってから変えたいと思っても父親と母親の協議がうまくいかない事もあるでしょう。養育費を減額したい父親と養育費を減らしてほしくない母親では話し合いがすすまないことも考えられます。
それでは実際に養育費が減額となるのはどのような場合があるのでしょうか?この記事では離婚後に養育費が減額となるケースについて詳しく解説していきます。
事情の変更があるかどうか
養育費の増額や減額の判断基準になるのは離婚後に父親または母親に事情の変更があったかどうかがポイントになります。では事情の変更とはどのようなものか1つずつ確認していきましょう。
父親か母親の収入が変わった
離婚時の養育費は裁判所から公開されている養育費算定表を基準にして決定します。養育費算定表は父親と母親の年収を当てはめて計算しますので、離婚後に父親または母親の年収に変更があった場合は養育費の額が変更になる要素となります。
父親の収入が減った場合や母親が仕事をはじめたりパートからフルタイムで働くようになったりして収入が増えると養育費が減額される可能性があります。
近年では働き方改革やテレワークの影響で残業時間が大幅に少なくなり、残業代が減ったために父親の年収が下がってしまったというケースもあるでしょう。
また、逆に父親の収入が増えたり母親の収入が減ったりすると逆に養育費が増額になる可能性があります。
父親または母親が失職した
父親または母親が何らかの理由で仕事を失ってしまった場合も事情の変更になります。
コロナ禍で仕事を突然失ってしまった方も少なくありません。職を失ってからまた働くまでの間は収入がありませんので、父親が失職した場合は養育費が減額、母親が失職した場合は養育費増額の原因となります。
しかし、中には養育費を払いたくないからと仕事をやめてしまう父親がいたり、養育費をたくさんもらいたいから働かないという母親もいます。
働ける能力があり働ける状態なのにもかかわらず、自分勝手に仕事をやめて次の仕事に就かない等の場合は、働く能力があるのに働いていないと判断され養育費の増減に影響しないと判断される場合もあります。
父親が再婚した
子供の父親が再婚して扶養する家族が増えた場合は養育費減額の要素となります。再婚相手の連れ子を養子縁組したり再婚相手との間に子供が産まれた場合は養育費が減額になると考えて良いでしょう。
この場合、再婚相手が働いて収入があるのであれば養育費の減額には応じる必要はないのでは?と考える方もいますが、養育費は子の親が負担するものですので再婚相手に養育費を請求することはできません。
しかしながら、再婚相手に相当の収入がある場合、再婚相手との間に産まれた子供の扶養割合の計算によっては養育費の減額が少なく計算される可能性はあります。
母親が再婚した
子供と一緒に生活している母親が再婚して、子供が再婚相手と養子縁組した場合は、子供の第一扶養義務者は養子縁組した父親になり、実父は第二扶養義務者となります。
養育費の支払い義務が完全に無くなるわけではありませんので、養親に十分な収入がなく、子供が生活していくことができないような場合は養育費の支払いをする必要がでてくる場合もあるでしょう。
母親が再婚しても再婚相手と子供が養子縁組しなけば子供の第一扶養義務者は実父のまま変わりませんので養育費の支払いは続きます。
ただし、再婚相手から多額の援助を得て生活をしているような場合は養育費の減額が認められる場合もあります。
養育費をもらうために再婚相手と養子縁組しないという悪質なケースは無いとはいえませんが、再婚相手と子供が養子縁組しない状況では子供が再婚相手の相続人になれないというデメリットや子供と苗字が違うなど、養育費のみを考えて養子縁組しないというのは子供の事を考えると疑問がでてくるものです。
また、再婚して子供が再婚相手と養子縁組したにもかかわらず、その事実を元夫に知らせない元妻もいます。離婚後に面会交流がなく、元妻と連絡を全くとっていない場合は再婚したかどうか元妻が教えてくれなければわからないという状況にもなりかねませんので注意が必要です。
話し合いができない場合は調停を申し立てる
ここまでで養育費の増額、減額に影響する可能性がある事情の変更について確認をしてきました。事情の変更があり養育費を減額または増額してほしい場合はまず相手方に連絡をとり、事情の変更を説明したうえで養育費の増額、減額をお願いするという手順になります。
しかし、相手方としては決められた養育費を変更することには難色を示す可能性もあるでしょう。
特に父親が母親に養育費の減額を申し出る場合は母親としては子供との生活もありますし、母子家庭での生活は決してお金に余裕があるとはいえない場合も多く養育費を減らされると困るというのが本音です。
お願いする際には事情の変更なんだから当然だ!という態度ではなく、養育費を減額しないように今まで努力をしてきたがそれも難しくなったということを話して理解を求めましょう。
相手方が養育費の減額に聞く耳をもたない場合は話し合いが難しいですので調停を申し立てて話し合うことも検討しましょう。
中には調停で決まれば減額は仕方がないと納得をしてくれる方もいますし、逆に調停で決まるまでは減額に応じないと頑なな態度を示す場合もあります。
公正証書を作る時は注意しましょう
離婚公正証書を作成して養育費を約束する場合は、その養育費が養育費算定表に照らし合わせて適切な金額なのかどうか必ず確認しましょう。
養育費算定表よりも高い金額や低い金額で離婚公正証書を作成しても、後に養育費算定表を知らなかったから養育費の金額を変更してほしいという主張は通用しません。
相場よりも高い、低いことを知ったということは事情の変更にはあたらないからです。
一度、離婚公正証書で養育費を約束すると上述した事情の変更がなければ養育費の金額を変更することは難しくなりますので離婚公正証書を作成する際には必ず裁判所から公開されている養育費算定表を確認して養育費を決定するようにしましょう。
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